ゆんたん

長い長いさんぽ ビームコミックス

長い長いさんぽ ビームコミックス

 長いことゆずの話は読んできました。「ずっと一緒にいた猫が死ぬ」というテーマ。それだけで泣ける人も多いのかも知れません。私もゆず好きだし、絶対心動かされると思いました。でもなんだか話の中の須藤さんは自分を責めすぎていて、逆に、共感とはほど遠いものを感じました。事前の予想とは違う心動かされ方をしました。
 それから、須藤さんがフィジカルなものに囚われすぎていて、とても奇妙に感じました。布団についた抜け毛をテープで収集し、保存している様は、「愛するがゆえに猟奇殺人を犯した人間が、その現場の後始末をしている姿」に見えました。
 作品としてみても、好きではないです。うまく云えませんが、脅迫されているような気持ちになりました。自分の家の猫が命尽きても、ああは振舞えないと思いますし、その必要も私にはないと思いました。須藤さんの悲しみが、そう出来ない人間の悲しみに勝るとは思わない。と、いうより、そもそも勝る勝らないの問題ではなかった。須藤さんの悲しみが、あまりに特異でシンパシーを感じにくいので、私の中では普遍性全く持たないのです。だから「勝る」「勝らない」なんて言い方をしてしまった。この言い方は、全く間違い。
 ある特別な人の特別な悲しみとしか捉えられなかったのが、この作品に私がのめりこめなかった、号泣できなかった理由ではないかしら、と思います。